UIデザインシステムは、色や文字、部品だけでなく、それらをいつ、どう使うかというルールを共有する仕組みです。見た目がそろっていても、同じボタンが画面によって違う意味で使われていれば、一貫した体験にはなりません。
GoogleのMaterial DesignやAppleのHuman Interface Guidelinesから学ぶときは、外観を写すより判断の理由に注目します。この記事では両者から参考にできる観点を整理し、Pixsoのデザインシステム管理につなげる小さな実践例を紹介します。
1. デザインシステムを、見た目と使い方の両面から学ぶ
コンポーネントライブラリは、繰り返し使うUI部品をまとめたものです。デザインシステムでは、それに加えて用途、状態、アクセシビリティ、文章表現、変更の運用なども定義します。個人制作でも、同じ判断を何度もやり直しているなら、最小限のルールを残す価値があります。
Material DesignはUIを作るためのガイドラインとコンポーネントを提供し、Human Interface GuidelinesはAppleの各プラットフォームでの設計を扱います。どちらかの外観をそのまま自社の規則にするのではなく、対象端末と利用者の作業に合う部分を選びます。
2. Material Designから学ぶ5つの観点
ここでは、Material Designを読む際に役立つ5つの観点を取り上げます。これは公式仕様を5項目に限定したものではありません。

2.1 操作と結果のつながりを示す
動きは装飾ではなく、何が開き、どこへ移動したのかを伝えるために使います。項目を展開した後も元の位置との関係が分かれば、利用者は画面の変化を追いやすくなります。動きを減らす設定でも意味が失われない表現を用意します。
2.2 情報の階層を、文字と余白で示す
見出し、本文、補足説明が同じ強さだと、重要な情報を見つけにくくなります。文字の役割と余白をそろえ、画面幅や文字量が変わっても意味のまとまりを保ちます。印刷物と同じ配置を固定するのではなく、スクリーン上での読み方に合わせます。
2.3 色を役割で管理する
Material 3では、色をprimary、surface、errorなどの役割として扱います。例えば主操作の背景とその上の文字を、対応する組み合わせで管理します。単に使用色を4色に絞る規則ではありません。詳細は公式のColor roles(英語)を参照できます。

2.4 影を使用して立体感を出す
影や面の違いは、手前にある要素や区切りを示す手掛かりになります。ただし、影があれば押せる、影がなければ押せないという規則にはできません。ボタンのラベル、形、配置と状態を組み合わせ、操作できる場所を明確にします。
2.5 連続性のあるアニメーション
メニューの開閉なら、押したボタンと展開した領域の関係が分かる変化にします。長い演出で操作を待たせたり、動きだけで完了を知らせたりしないようにします。動かさなくても、展開状態と選べる項目が読めることが先です。
3. Human Interface Guidelinesから考える6つの設計観点
ここでは、一貫性、操作、反応など6つの観点で画面を見ます。対象プラットフォームの詳細はAppleのHuman Interface Guidelines(英語)で確認できます。

3.1 美的完成度
装飾の多さではなく、内容と操作に合う外観を選びます。予約の確認画面なら、写真より日時と金額を読み取りやすくすることが優先です。
3.2 一貫性
同じ操作には同じ名称や見た目を使います。プラットフォームで一般的な操作を独自の記号に置き換えると、利用者が覚え直す必要があります。アイコンだけで意味が伝わらない場面では、文字も添えます。
3.3 直接操作
並べ替えのように対象を直接動かす操作では、何を動かしているか、どこへ置けるかを示します。ドラッグだけに依存せず、別の入力方法でも同じ目的を達成できるように考えます。
3.4 フィードバック
操作を受け付けたか、処理中か、完了したかを伝えます。ボタンの色の変化だけで終わらせず、予約の確定など重要な結果は読めるメッセージとして残します。
3.5 比喩表現
Appleのデザインシステムにおける比喩とはメタファーと呼ばれており、例えば、音量調節の際に使用されるスライダーなどが代表的です。パッと見てオーディオ機器に取り付けられているボリュームを連想させることで、最小限の表現からユーザーに何をするところなのかを暗示しています。
3.6 ユーザーによる制御
利用者が処理を始めるだけでなく、必要に応じて戻る、取り消す、中断する方法も考えます。個人設定を増やすことだけが制御ではありません。取消できない操作では、実行前にその結果を明確にします。

4. 学んだ原則をPixsoで共通ルールにする
大きなライブラリを最初から作るより、繰り返し使う部品を一つ選ぶと、ルールの不足が見つかります。ここでは予約サービスの主操作ボタンを例にします。
4.1 予約ボタンを一つの共通ルールにする

Pixsoの同じファイルに「予約内容を確認」「予約を確定」の画面を並べます。共通の部品として色、文字、角丸、余白をそろえたうえで、ラベルは実際に起こる動作に合わせます。「次へ」だけでは、予約が確定するか判断できません。
| 決めること | この予約サービスでのルール例 |
|---|---|
| 用途 | 画面で最も重要な一つの操作に使う |
| 文字 | 操作の結果が分かる動詞を含める |
| 状態 | 通常、フォーカス、処理中、利用不可を区別する |
| 失敗した場合 | 確定していないことと、再試行または修正する場所を伝える |
| 変更する場合 | 影響する画面と実装担当者を確認してから共有する |
4.2 部品と、その使い方を一緒に共有する
ボタンをコンポーネントとして再利用し、横に用途と例外を書きます。長いラベル、狭い画面、注意事項が増えた画面にも配置し、見た目をそろえるだけで使いにくくなっていないかを確かめます。
レビューで「ここでは予約はまだ確定しない」と決まったら、文言だけでなく遷移先と仕様もそろえます。デザイン側の部品を変更したことと、開発済みの画面へ反映されたことは別です。誰が反映を確認するかまで決めて共有しましょう。
まず一つの操作で、迷わないルールを作る
優れたデザインシステムは、毎回の判断を省略するためだけのものではありません。同じ状況で同じ判断ができ、例外があれば理由を説明できるようにするものです。まず予約ボタンのような身近な部品で、外観、言葉、状態と変更方法をそろえるところから始めてください。